2025年度、盛心塾三河・鹿児島盛経塾合同勉強会
【合同勉強会ご報告】
2025年度、盛心塾三河・鹿児島盛経塾合同勉強会at 濵田酒造・伝兵衛蔵
令和7年6月8日、鹿児島県いちき串木野市にある「濵田酒造 伝兵衛蔵」にて、三河塾と鹿児島塾による合同勉強会が開催されました。
今回の学びの舞台となったのは、明治元年(1868年)創業の老舗焼酎蔵・濵田酒造。蔵元であり、代表取締役社長の濵田雄一郎氏より、会社の歴史・経営哲学・そして稲盛哲学との関わりについて、直接お話を伺う貴重な機会となりました。
【濵田酒造の歴史と変革】
濵田社長からは、家業として始まった焼酎づくりを、「地域に根ざした日本一の酒蔵」へと進化させる過程におけるご苦労や挑戦、そして代々受け継がれてきた“地域と共にある精神”について語っていただきました。
焼酎文化の本流を守りながらも、「國酒を世界へ」という志を掲げて3つの蔵(傳藏院蔵・金山蔵・伝兵衛蔵)を展開する姿勢は、まさに伝統と革新の両立。また、「焼酎は嗜好品ではなく、“人の心をほどく文化”だ」という言葉には、蔵人としての誇りと使命感が込められていました。
【稲盛哲学との出会いと実践】
社長ご自身が稲盛塾長の教えに深く共感し、盛和塾に学ばれた経緯についても丁寧にお話しいただきました。
とくに「売上を最大に、経費は最小に」というシンプルながら本質的な経営の原理を、酒造りという現場に落とし込む中で、「利他の心」が経営の柱となっていったこと、そして「誰のために、何のために働くのか」という問いを社員全員で共有し続けていることなど、稲盛哲学の実践例が随所に光っていました。
濵田社長の温かくも力強い語りと、蔵の歴史に触れる中で、私たち自身の原点にも立ち返ることができました。
改めて、受け入れてくださった濵田酒造の皆様、そして参加されたすべての塾生の皆様に、心より感謝申し上げます。
【経営問答セッション in 中原別荘】
合同勉強会の後半、18時からは鹿児島市「中原別荘」にて、塾生同士による経営問答セッションが行われました。
この時間では、日々の経営の中で葛藤や課題を抱える塾生たちが、壇上に座る三河塾・鹿児島塾の代表顧問陣に対して率直な質問を投げかけ、その一つひとつに対して、真剣かつ誠実な回答が返される、まさに“学びの真骨頂”とも言える場となりました。
壇上には、経験豊富な経営者であり、長年稲盛哲学を実践してきた代表顧問の皆さまがずらりと並び、塾生の問いかけ一つひとつに対して、自らの体験を交えながら具体的かつ本質的なアドバイスを惜しみなく語ってくださいました。
【問う者の覚悟、答える者の責任】
「従業員がついてこないのは、自分が見せている背中のせいなのか」
「価格競争の中で、“値下げしない経営”をどう貫くべきか」
「次世代への事業承継に、自分がどう心構えを整えるべきか」
こうした本音の質問に対し、
「全ての原因は自分にあるという前提に立つこと」
「“利他の心”こそが顧客を動かし、結果として利益を生む」
「継がせる前に、自分自身が“継ぎたいと思わせる生き方”をしているかを問え」
——そんな珠玉の言葉が、ひとつまたひとつと場内に響き渡りました。
その表情は、叱責ではなく「応援」。
その言葉は、理論ではなく「実践」。
壇上とフロアの間には一切の遠慮も飾りもなく、
まさに「本音でぶつかり合う学びの場」がそこにありました。
この経営問答を通じて、塾生一人ひとりが、自らの課題と真っ直ぐ向き合い、「問いを立てる力」「学びを行動に変える力」を養う、貴重な時間となりました。
【懇親会&グループディスカッション】
経営問答を終えたあとは、待ちに待った懇親会。
鹿児島の地酒と美味しい料理を囲みながら、塾生同士がグラスを交わし、胸襟を開いた本音のグループディスカッションが始まりました。
「さっきは壇上では聞けなかったけど、実はこんな悩みがあってな……」
「うちの会社でも同じような課題があったよ。こんなふうに乗り越えたんだ」
そんな言葉が自然と飛び交い、
誰もが“社長”という肩書を外して、一人の人間として向き合い、語り合う時間がそこにありました。
お酒の力も借りつつ、
見栄や遠慮を脱ぎ捨てた対話が生まれるのも、盛経塾ならではの風景。
ある参加者がふと漏らした一言、
「こうして語り合える仲間がいるって、すごく心強いですね」
その言葉が、この夜のすべてを物語っていたように感じます。
ファルマコム株式会社 代表取締役 上原靖洋氏
「医療・介護・地域に寄り添う経営」
令和7年6月3日の合同勉強会では、南洲顕彰館にて開催された、ファルマコム株式会社 代表取締役の上原靖洋氏による経営発表が行われました。
上原氏は、鹿児島市を拠点に調剤薬局「ゆうゆう薬局」や在宅医療、介護支援、サービス付き高齢者住宅など、地域医療の最前線で幅広く事業を展開する経営者です。
【経営の軸:「人に寄り添い、地域を支える」】
発表の冒頭、上原氏は「医療も介護も、“人と人との関係性”がすべて」と語り、ファルマコムの原点は「困っている人を助けたい」という純粋な思いからスタートしたことを明かされました。
調剤薬局を単なる“薬を渡す場所”ではなく、地域の命を支える相談拠点と捉え、在宅医療にも力を入れ、24時間体制・無菌調剤室完備など、先進的な取り組みも紹介されました。
【稲盛哲学と現場経営の融合】
上原氏の経営には、稲盛哲学の精神が深く息づいています。
「利他の心で行動すること」「人間として正しいことを判断の基準にすること」——
これらの考えは、薬剤師や介護職員の現場レベルにまで共有されており、会社全体で「フィロソフィ勉強会」を開催しながら、日常の業務に浸透させているとのこと。
特に印象的だったのは、
「売上の前に“ありがとう”の数を大事にする」という言葉。
これは、目先の数字にとらわれず、地域との信頼関係を大切にしてきたファルマコムの姿勢を象徴するものでした。
【人を活かし、未来を見据える経営へ】
発表の後半では、人材育成にも話が及びました。
「制度ではなく、想いで人が育つ」「働きがいが、やりがいに変わる瞬間を創りたい」
という言葉には、経営者としての熱と覚悟が込められていました。
今後はICTや多職種連携を活かしつつ、「医療と介護の垣根を越えた支援体制を、鹿児島から全国へ発信していきたい」と語り、参加者からは大きな拍手が送られました。
株式会社文化社 代表取締役 土屋妥九氏
「見えないところを支える、まっすぐな経営」
令和7年6月3日、南洲顕彰館にて行われた経営発表の第二部では、株式会社文化社 代表取締役の土屋妥九氏が登壇されました。
文化社は、鹿児島市を拠点に、下水道・浄化槽・産業廃棄物処理といった「地域の見えないインフラ」を支える事業を展開する老舗企業です。創業から60年以上、暮らしの“当たり前”を守るために現場と真摯に向き合い続けてきました。
【「縁の下の力持ち」であり続ける】
土屋氏は冒頭、「私たちの仕事は決して華やかではありません。でも、誰かがやらなければならない仕事です」と語り、その言葉からは業務への誇りと責任感がにじんでいました。
上下水道の維持管理、浄化槽の保守点検、産業廃棄物の収集運搬といった業務は、市民の目にはほとんど映りません。しかし、これらのインフラがなければ日常は成り立たない——まさに**“社会の根っこを支える”経営**を一貫して貫いてこられたのが文化社です。
【技術と人を守る経営】
また、現場で働く社員一人ひとりへのまなざしも、土屋氏の経営の柱です。
「誇れるのは設備ではなく“人”です」
という言葉には、設備や車両ではなく、現場で汗を流す社員たちへの深い信頼と感謝が込められていました。
資格取得支援や安全教育、福利厚生の充実など、社員が安心して働ける環境づくりにも積極的に取り組まれており、「技術力は“人づくり”の上にしか育たない」と語られた言葉が印象的でした。
【経営者としての信念と使命】
発表の終盤には、稲盛哲学に通じるような経営観も示されました。
「正しいことを正しくやる。
ごまかさず、逃げず、真正面から向き合う」
——そんな言葉に、土屋氏の経営者としての潔さと誠実さが凝縮されていたように思います。
静かで力強い語りの中に、「この人になら命を預けられる」と感じさせるような信頼感がありました。
地域の衛生と安全を守り続ける文化社の存在と、それを率いる土屋氏の真っすぐな生き方に、多くの塾生が心を打たれた発表となりました。
合同勉強会 締めのご報告】
稲盛家のお墓参りにて、心を整える時間
二日間にわたる学びの締めくくりとして、私たち三河塾・鹿児島塾の塾生一同は、鹿児島市の西郷隆盛墓地内にある稲盛家のお墓を訪れ、静かに手を合わせました。
鹿児島という地に生まれ、世界に羽ばたいた稲盛塾長の魂に直接触れるような時間は、言葉にできないほど深く、そして温かいものでした。
塾長が生涯をかけて伝えてくださった「人としてどう生きるか」「利他の心」「本気で働くことの尊さ」——
そのすべてが、私たちの胸の中で再び灯をともすような瞬間となりました。
手を合わせる一人ひとりの表情には、感謝と決意、そして未来への静かな覚悟がにじんでいました。
【心を高め、経営を伸ばす——その原点に立ち返る】
このお墓参りをもって、合同勉強会のすべてのプログラムが終了いたしました。
学び、語り合い、飲み交わし、笑い合い、時に悩みも打ち明けた二日間。
それぞれの場所に戻ってから、またそれぞれの現場で“実践”していくために、
私たちはこの場で、もう一度「心の原点」に立ち返ることができました。
三河塾の皆さま、遠方よりご来鹿いただき本当にありがとうございました。
そして鹿児島塾の仲間の皆さま、最高の場づくりに感謝申し上げます。
志を共にする仲間とともに。学びは続く——これからも。